8020運動というのが20世紀の末から歯科界では重要課題として言われてきました。
(80歳で20本の歯があることを目標とする運動)
おかげさまで現在においてはかなりの方がその状況となっており、歯が多く残っていて食べることの出来る方が多い状況です。
しかし高齢化の現在否が応でも90~100歳くらいまで生きています。
すると80歳を超えて「認知症」や内科的疾患で口腔の運動に問題が生じた方は、歯がいくら残っていても食べにくかったり、食べることが出いない方も多くおられます。
仕事がら月に1度は特別養護老人ホームで入所者に食べ方をお教えしています(ほとんど介護士の方にですが)
すると食べることの出来ない方(胃ろうが増設されていたり、ムセがひどくて噛める食材がダメだったり、食べるという機能を忘れてしまっていたり)が多くおられます。
そうすると歯の存在意義が無くなってしまい、むしろ歯がある為に口腔の汚れから感染症を引き起こしたり、介護の方がブラッシングというお仕事が一つ増えたり。
我々も気が付かなかったのですが歯があれば噛めるという妄信の元いかに歯を残すかを考えすぎて、食べることが他の要因で出来なくなり歯が邪魔ものでしかない存在となることがあるという事を。
インプラントも同じ事です。
インプラントはうまくいけば一生持ちますが、仮にその方が老後認知症などで食べられなくなったら、そのインプラントは細菌の巣窟となり、お口の中の環境は悪化の一途。
またそのインプラントの反対側の歯が無くなり噛み合わせが無くなったりすると、そのインプラントが反対側の歯肉に食い込んで褥瘡(傷)を作ることもよくあります。
ご本人は認知症でその痛みを感じなくても(訴えなくても)いつも口の中が傷だらけになったりすることがあります。
では撤去しようと思うと、ご高齢で内科的な疾患があり手術が出来ない事も多いのです。
そういう事も考えて当院ではインプラントの功罪も考慮した上で患者さんにインプラントが大丈夫かどうかなどをきちっとお話させていただいております。
その時にはいいと思われた考え方や治療方法が、加齢や時代の変化と共に変わってくることが有り得るという事を心に刻んで、なんでも新しい事がベストであると考えず、いろんな事を考慮して無理のない治療方法を模索していくように心がけています。