親知らずとは
親知らず(智歯:ちし)という歯があります。
世間的にはよく知られているこの文言も、結局は患者さん方はよくわかっていないことが多いです。
まず親知らずとはどんな歯と言いますと、専門用語では第3大臼歯となっています。
奥歯には小臼歯という糸切り歯の奥にある細い臼歯と、その奥にあるその小臼歯より面積の広い大臼歯があります。
この大臼歯を手前から数えて3番目にある歯を俗に親知らずと言います。
読んで字のごとく親ですらその歯の存在を知らなかったという歯の事です。
年齢的には18歳くらいから以降に出てくることが多く(出て来なくて歯ぐきが腫れるだけのこともありますが。そのために親知らずが腫れたのか、虫歯で腫れたのか、はたまた風邪の延長線上で腫れたのかなどの鑑別診断が大事となります)
私の経験では16歳で腫れて来られて痛くて仕方が無いという事で来られた方が最年少記録です。
よく12歳ごろに奥歯が腫れたので親知らずが出てきたのではないかという事でお子様を連れて来られる方がおられますが、。これはまず間違いなく第2大臼歯が出てきた状態と思われます。
歯と言うのは出てくるとき(萌出といいます)は歯茎が腫れるのが普通です。
これはどの歯でも同じでして乳歯が萌出する時も腫れて痛みを訴えるお子様もおられるくらいです。
但しその歯がお口の奥にあり、のどにも近い場所の為に同じ腫れるとしても痛み方もひどく腫れた炎症状態がのどの方や口蓋の奥まで波及することがあり、ひどい時は摂食障害や開口障害が起こり、ひどく日常生活に悪影響を及ぼすことがあります。
このために親知らずが出てきたときは、歯を抜いたほうがいいという話が巷にあふれてしまう訳です。
いろんな親知らずの生え方
まっすぐ生えた親知らずです。
少し横を向いて生えた親知らずです。
11歳の子の親知らずです。
一番奥に白い影がほんの少しあるのが親知らずです。
11歳ですでに親知らずは作られつつあるのです。
横を向いた親知らずを放置したために手前の歯が虫歯になりました。(黒い所です)
抜いたほうがいい親知らず
親知らずを抜くべきか抜かないべきかという事にはいろんな考え方があります。
ただ一つ間違いなのは「親知らずは抜かなくてはいけない歯である」という考え方です。
これはうそです!
親知らずと言えども大事な1本の歯です。
私ども町医者はいつも歯が無くて困っている方が多く来院されますが、歯が多くて困っているという方には会ったことがありません。
ですから基本的には親知らずと言えども抜かない方向で考えてみようとしています。
とは言えやはり抜かなくてはいけない、もしくは抜いたほうがいい親知らずがあるのも事実です。
繰り返し腫れる
繰り返し腫れる親しらずがあります。
体調が悪かったりやや熱が出ると、必ずと言っていいほど腫れたり痛んだりする場合があります。
これは親知らずの周りのブラッシングが不十分か、やりたくても歯ブラシが届かずいつもプラークが付いて
歯冠周囲炎を引き起こしているような状態かと思われます。
物が詰まる
親知らずとその手前の歯の間にいつも物が詰まってしま素場合もあります。
特にその親知らずが横を向いているような時、そのまま放置すると食べかすが虫歯の
原因となり、親知らずのみならずその手前の歯まで虫歯にしてしまう事が多いです。
また横を向いていると詰まった箇所がその手前の歯の歯根に近い部分が虫歯になります。
すると治療としては大きな虫歯、もしくは「歯根カリエス」となる為に、神経を取る処置(抜髄)
となることも多いです。
磨くことができない
歯ブラシが届かないときがあります。
緊急性はありませんが磨けない箇所がお口の中に長期間存在すると、お口全体の菌量が増えますので、
確実に口臭や歯周病の原因となります。
放置せず抜歯をせざるを得ないと思います。
嚢胞ができているとき
まれに親知らずの周りに黒い影があり、親知らずの一部を覆っていたり接していたりすることがあります。
放置すると顎の骨の一部が侵食されることもあり、親知らずと共に抜歯、摘出手術が必要となることがあります。
まれに大きくなると下顎神経を圧迫して、知覚麻痺を起こすともいわれています。
矯正治療をしている時
矯正治療をしている時に親知らずがあると、まれに手前の歯を押すために歯並びが後戻りすると言われています。
従って矯正医は矯正治療中に親知らずが生えてきたりすると抜歯をするように指示されます。
せっかく長期間、高額な治療費を支払ってきれいになったのですから、後戻りは避けたいものです。
妊娠を希望されている方や骨粗鬆症の治療を始める方
今現在は痛みも腫れもなく取りあえず問題はなくとも、歯の生え方や歯ブラシをやりにくいような親知らずは妊娠を希望されている方や骨粗鬆症の治療を始める方、抗がん剤の治療を始める方などはあらかじめ抜歯しておくのも一法だと思います。
いざ妊娠してから痛みが出たら胎児に響きますし、骨粗鬆症の治療の時に使うお薬は抜歯した傷跡の治癒を阻害して腐骨を作ることがあり、その治癒はかなり難しいとされています。
抗がん剤治療を始める方も体力の低下の恐れがありますので、そんなときに腫れたり痛みが出ると
対応方法が無くなることもありますので。
日本で歯科治療が受けられない方
今年の夏にも多くの海外在住の方が来られました。
留学されている方、海外赴任で一時帰国された方など、希望の時に簡単に歯科医院へ行くことが出来ない方がおられます。
もちろん在住している国の歯科治療を受ければいいと言えばそれまでですが、文化の違い技量の問題、
費用の問題などいろいろとあるようです。
そういう場合もやむなく危なそうな箇所の治療だけは日本語の通じる母国でしておきたいという意識が皆さんあるようで、何人かの方の抜歯をしました。
抜かない方がいい親知らず
上下でまっすぐ生えて噛み合っている時
上下の親知らずがまっすぐに生えていて、上下でその歯がかみ合っているときは絶対に抜いてはいけません。
せっかく食べられる箇所があるのに、それが無くなると咀嚼力に多大なる悪影響が生じます。
仮に1本だけ横に生えていて、他の親知らずがまっすぐに生えているような時。
歯医者は「こっちも抜いておこうか」などと言います。
こんな事は絶対にダメです。
抜くには抜くだけの理由があるのです。
ですから何らかの理由で1本抜くとしても、ついでになどという事はあり得ません。
理由なくついでに抜いてもらう事の無いようにしてくださいね。
横に生えていても手前の歯と距離があり、食べ物が詰まらない時
先ほど横に生えて物が詰まる時には抜歯をと書きましたが、あくまでもつまらない時はそのままにしておいても問題ありません。
他の歯に悪影響を及ぼさないなら横であろうが縦であろうが放っておけばいいのです。
歯の数の少ない方
むし歯や歯周病でただでも歯の数が少なくなった方にとって親知らずは大事なご自身の1本の歯です。
何らかの役立て方法(咀嚼やブリッジの支え、入れ歯の針金を書ける場所としてなど)があります。
仮にそういう場合は、私は神経を取ったり根っこだけになったとしてもそういう歯の数の少ない方の親知らずは他の歯と同様に大事に扱うようにしています。
歯の数の少ない方
むし歯や歯周病でただでも歯の数が少なくなった方にとって親知らずは大事なご自身の1本の歯です。
何らかの役立て方法(咀嚼やブリッジの支え、入れ歯の針金を書ける場所としてなど)があります。
仮にそういう場合は、私は神経を取ったり根っこだけになったとしてもそういう歯の数の少ない方の親知らずは他の歯と同様に大事に扱うようにしています。
親知らずの抜歯に関する総括
私は基本的には親知らずと言えども大事な1本の歯であるという原則論を持っています。
ただしその歯がご本人にとってメリットなある歯であるかそうでないか、はたまた特にどっちでもないかという事を専門家として考えてあげるようにしています。
各個人事情は様々です。
いくら抜歯したほうがいいと言っても怖いと感じるのは当然ですし、抜歯による副作用もありますし何より患者さんの気持ちまでは我々帰ることはできません。
でもやはり重症化して頬まで慣れたり、ひどい感染症があったり、これから大きな病気の治療をするなどの
諸般の事情があれば、これは患者さんの為にも抜歯をお勧めすることもあります。
我々は親知らずを抜きたいとか、抜きたくないとかという観点での藩士ではなく、すべては患者さんファーストで何がより患者さんのメリットとなるのかを考えた上でいろんなアドバイスをさせていただいています。
ですから心配なく何でもご相談いただければと思います。
親しらず。抜歯ありきの歯ではないことを申し上げたいと思います。